
— 多摩エリアという「青」を、ブルーオーシャンとして捉え直す —
2026年2月8日(日)、地域共創シェアオフィス func にて、『青い東京』出版記念トークイベントを開催いたしました。午前中まで雪が降っていたとても寒い日ではありましたが、たくさんの方に足を運んでいただき大盛況となりました。
本イベントは、版元である けやき出版 とfuncによる共催企画。
書籍『青い東京』は、多摩エリアというブルーオーシャンの姿を浮かび上がらせた一冊。登場する8組の実践者が一堂に会し、「多摩エリアで働くこと」「暮らしと仕事」「東京の周縁に広がる可能性」について、率直な言葉で語り合う場となりました。
本イベントでは、8組を2人ずつ、4つのテーマに分けたクロストーク形式で進行しました。



Cross Talk 01|夢は、人と交わってかなえる

鈴木弘樹(喫茶ソラクラゲ)× 坂根千里(スナック水中)
最初のセッションでは、「夢を、いかに人との関係性のなかで形にしてきたか」が語られました。
鈴木さんは、中学生時代、西国分寺のクルミドコーヒーでの職業体験をきっかけにしてカフェに関わり続け、一度は別の企業に転職したものの、結果として“喫茶店を営む人生”に自然と導かれていったプロセスを語りました。大切な人との関係の積み重ねが彼の選択をつくってきたのだろうと感じました。
坂根さんもまた、スナックという場を通じて人と出会い、支えられながら自分の店を形にしてきました。「美しい景色を共有したい」という言葉には、スナックを単なる飲食業ではなく、人と時間を共有する場として捉える姿勢がにじんでいました。
二人の話から浮かび上がるのは、生活の仲間が、そのまま仕事の仲間にもなっていく感覚でした。
Cross Talk 02|まちを愛するきっかけを仕掛ける

関谷昴(みみずいる)× 横溝惇(スタジオメガネ)
このセッションでは、「まちづくりにどう関わるか」をそれぞれの視点から語りました。
多摩ニュータウンを拠点に設計活動を行う横溝さんが「街に関わること自体への興味」から始めたのが「建築スナック」。場所を先につくったことで、結果的にいろいろな人から相談を受けるようになり、徐々にまちとの関係が生まれていったといいます。デザインがボランティアにとどまらず、対価のある仕事となるよう丁寧に伝えていく積み重ねを通して、クリエイティブな仕事を地域の中に生み出していく姿勢に共感しました。
関谷さんは、海外での経験を経て府中に戻り、あらためて“ローカルを視ることの手触り”に可能性を見出したそうです。世界を見たからこそ、一番近い地域でものごとを積み重ねていくことに価値を感じられるようになったことや、有機的な社会をつくりたい、その土台をつくることを大切にしたい、という話が印象に残りました。
Cross Talk 03|地域×□で新たな価値を生み出す。

スミダエリ(デジタルハリウッドSTUDIO立川)× 平槇駿一(スイベルアンドノット)
ここでは多摩地域と23区での働き方の違いが、かなり率直に語られました。
23区では「会社」をベースに人付き合いが生まれることが多い一方、多摩地域では「人」を起点に交流や仕事が生まれやすい。地域に根差しているからこそ、日常的な関係性のなかから自然に仕事が立ち上がっていく、という話が共有されました。
平槇さんは一方で、地域だけで仕事をしていると、業界全体のスピード感から遅れてしまう危うさも指摘しました。地域活性化の側面では役に立っている実感があるが、業界全体で見ると後れを取っていると気づく瞬間があるそうです。だからこそ、意識的に外に出て、情報を取りにいく必要があるという指摘にははっとさせられました。
スミダさんは、人との距離が近い関係性を大切にしたい人にとって、多摩は非常に相性の良い地域だと語ります。企業規模も比較的小規模で、人と人の距離が近いため、クリエイティブな仕掛けが遠くまで伝わる可能性があるのでは。デジタルハリウッドの卒業生が、そうした地域のプロジェクトに関われる未来があったらいい、という言葉が印象的でした。
Cross Talk 04|人と自然の新しい関係性を探る。

今野紗貴(NPO birth)× 菅原和利(東京・森と市庭)
今野さんは、パークコーディネーターの役割を「公園(自然環境)と人をつなぐこと」と説明。そのなかで、東京の人ほど自然環境に魅力を感じ、時間を使ってアクティビティに参加する傾向があると語りました。そうした点で、多摩地域は非常に恵まれており、魅力に気づいてもらうことで、その人の生活自体が豊かになっていくことを目指しているといいます。
菅原さんは、コロナ禍に奥多摩へ多くの人が訪れた経験を振り返り、「人は家の中や都心だけで暮らすのは無理だということがあぶり出された」と語りました。ご自身は、仕事と暮らしが分かれておらず、町を守るために消防団に関わることも当たり前の延長線上にある、「ワーク・ライフ・プレイミックス」という言葉を提唱しています。嫌いなものが入っていないから、無理に「オフ」に切り替える必要がない、という言葉が強く印象に残りました。
まとめ|「青い」は未熟さではなく、可能性の色
8組のみなさんによるクロストークを終えた後は、喫茶ソラクラゲさんの軽食ケータリングや、スイベルアンドノットさんのビールを囲みながら交流会がスタートしました。トークゲストや来場者の皆さんが自由に交わり、会場は終始にぎやかな雰囲気に包まれていました。
『青い東京』というタイトルが示す「青さ」は、未完成や若さを意味するものではなく、まだ形が定まっていないからこそ、何度でも考え直し、試行錯誤を重ねていける余白の色なのだと感じました。
少し大げさかもしれませんが、書籍の副題でもある「多摩エリアに住むこと、はたらくこと、つながること。」とは、人生と仕事、暮らしと社会、都市と自然の関係を編み直しながら、自分なりの関わり方をつくっていくことなのではないでしょうか。このトークイベントは、そうした多摩エリアでの生き方・はたらき方の輪郭を、具体的な実践を通して浮かび上がらせていたように思います。




